オウムの消防士
オウムの消防士
むかし、雪山(せっせん)というところに、大きな竹林がありました。
そこでは、鳥や獣や虫たちが仲良く暮らしておりました。歓喜(かんき)という名のオウムも竹林の住人でした。
あるとき、竹林に火事が起き火はまたたく間に燃え広がり、 あたりは火炎の地獄のようです。
生き物たちは、ただうろたえるばかり。いまにも焼け死にそうな、おそろしいありさまでした。
そのとき、オウムの 歓喜は大慈悲心を起こし、生き物たちを救おうと立ち上がりました。
翼に水をあつめ、猛火の上にそそぎかけ、全カをつくして消火につとめます。
しかし、火の勢いは、いっこうに弱まりそうにありません。
帝釈天という天の神さまは、空の上からことの成り行きを眺めていました。
「オウムよ、お前の翼で運ぶことのできる水はほんの数滴。
この広い竹林の火事を消すことなど、とてもできるはずない」
するとオウムの歓喜はこたえます。
「いま、この猛火を見て、どうしてじっとしていられましょう。
たとえ消すことがてきなくとも、 わたしの愛する竹林を、そして愛する命を救うために、
わたしは夢中で立ち上がったのです」
帝釈天は歓를の志に感動し、大雨を降らせて火事を消してくださいました。
消火につとめたオウムの歓喜は、お釈迦さまの前身のお姿だというお話です。