幻の城
幻の城
昔むかし、宝物を求めて冒険の旅ををする一行がありました。宝はとても遠くにあり、それを知っているのは一人のリーダーだけでした。
「王様の探検隊が五百日かけて行進しても、まだつかない。
そのくらい遠い道のりではあるが、 私についてくれば必ず宝のもとへたどりつく。さあ、出発だ」
一行は立派なリーダーに導かれ、困難な旅路をいさんで進みはじめました。
ところが、道半ばで人々は疲れ果てて、こう言い出しました。
「もうダメだ! もう一歩も歩けない。こんなに苦しくて恐ろしい旅なんかもうやめた。私たち は引き返す・・・」
リーダーは思いました。 (せっかくここまで来たというのに。宝の場所はもう近いのだ)
そこでリーダーは、不思議なカで目の前に幻の城を現わしました。
「みんなよく聞け。あそこに城がある。さあ、 勇気を出して、もうひと踏ん張りだ」
人々は喜んで城に入り、
「ああ疲れた。まずゆっくり眠るとしよう」
「おいおい、このご馳走を食べるのが先だろ」
「俺は先にひとっ風呂あびることにするぜ」
思い思いに体を休め、疲れた身体を癒したのでした。
それからどのくらいの時がすぎたのでしょう。 人々はお城の居心地のよさにことのほか満足し、最初の旅の目的をすっかり忘れてしまったのです。
そこでリーダーは言いました。
「さあ、宝のありかへと出発だ」
その言葉が終わるや否や、快適だった お城は消えてなくなり、人々はもときた道の上に立っていたのです。
「お前たちが満足していた城は幻の化城だ。 本当の宝はもうすぐそこにある。 一時の喜びに満足して本当の 目的を見失ってもいけない。 さあ、私といっしょに旅を 続けよう!」
こうして、一行は再び旅立ちました。
人々の顔は、明るい希望に光り 輝いているかのようでした。