猿の生き肝
むかし、竜宮城のお姫さまが病気になってしまいました。
「だれか、姫の病気によく効く薬を知らないか」
竜王さまが尋ねました。すると、タコが言いました。
「おそれながら、猿の生き肝がよいそうです」
「そうか。だれか猿をここまでつれてくるものはいないか」
「カメがよいと思います。泳ぐのは上手だし、甲羅の上に猿をのせてここまで運ぶこともできるでしょう」
ヒラメの意見にみんな賛成しました。
カメは猿のいる島まで泳いできました。ちょうど、猿が海を眺めていました。
「やあ、猿さんこんにちは」
「こんにちは。きみとははじめて会うね。どこから来たんだい」
「はい。竜宮城から来ました。竜宮城はとってもすばらしいところですよ。お城はぜんぶ金と銀でできていて、あなたの見たこともないご馳走であふれています。わたしといっしょに行ってみませんか」
カメは甲羅の上に猿をのせ、泳ぎだしました。沖まで来て安心したカメは、得意そうに言いました。
「お前はバカだね。これから竜宮城で生き肝をとられるというのに、のこのこついてくるなんて」
ほんとうのことを聞いて猿はびっくりしました。それでも猿は少しもあわてず、平気な顔で言いました。
「なんだ、そんなことなら先に言ってよ。きょうはとってもいいお天気なので、肝は洗濯して干してあるよ。さあ、早くとりに帰ろう」
カメはまんまと騙されて、島に逆戻り。島に着くと猿は急いて陸に上がり、 まっ赤なお尻をたたいて逃げ去りながら言いました。
「バカはお前だよ。肝を干したりできるもんか」
カメはがっかりして、竜宮城まで帰りました。
話を聞いた竜王さまは、かんかんに怒ってカメをムチでたたきました。
かわいそうに。カメの甲羅はこのときから、ひび割れだらけになってしまいましたとさ。