須梨槃特(すりはんどく)
お釈迦さまのお弟子の中に、2人の兄弟がおりました。
兄の名は槃特(はんどく)、弟の名は須梨槃特(すりはんどく)といいました。
兄はたいへん頭のよい若者で、お釈迦さまの教えを聞いたそばから理解することができました。
ところが、弟は正反対。なにしろじぶんの名前でさえ忘れてしまうほどで、いつも人からバカにされていました。
お釈迦さまは須梨槃特にひとつの教えを授けました。
「ロを守り意(こころ)を摂し身を犯すことなかれ。 是(かく)の如き行者は世を渡ることを得る」
こんなに短い詩でしたが、それても須梨槃特は、三年かかってまだ覚えることができません。
「お前には見込みがない。あきらめて家に帰ったほうがいい」
なにかと優しくしてくれた兄さんでさえ怒ってそう言いだす始末です。
須梨繋特は、悲しくなって大声で泣きました。
それをご覧になったお釈迦さまは、ほうきを一本、須梨槃特に手渡して言いました。
「これからは、毎日きちんと掃除をしなさい。そのとき、『塵を払い、垢を除かん』と唱えるのですよ」
塵と言えば垢を忘れ、垢と唱えれば塵が出てこない…それでも掃除は欠かさずまじめに努めました。
「がんばっていれば、かならずわかるときがくる」
お釈迦さまの言うとおりに、須梨槃特は雨の日も風の日も、庭を掃き続けま した。
その努カを支えたのは、お釈迦さまを信じ教えを求める強い心でした。
六年の月日が流れました。
あるとき、須梨槃特はハッと気がつきました。
「塵や垢とは、欲望の迷いだ!」
そのとき、須梨槃特の目の前がパッと明るく開けました。
お釈迦さまを信じ教えを求め、たゆまず修行を続けた須梨槃特。
お釈迦さまの教えを体得した須梨槃特の姿は、まるでお釈迦さまのように尊く立派でありました。