かんくちょう
あるお山のてっぺんに、とっても大きな一本の木がありました。
その木には、かんくちょうという鳥がすんでおりました。
このお山は、昼間はポカポカ温かく、この鳥はひがな一日、うつらうつらといねむりばかり。
目をさませば木から木へと歌をうたって飛びまわり、遊び暮らしておりました。
ところが、お日様が隠れると、たちまちこのお山は様がわり。
冷たい風がビュービュー吹いて、木の枝はビシビシと音を立て、今にもポキンと折れそうです。
かんくちょうは寒くて怖くて、ガタガタとふるえながら、枝にしがみつきました。
「しまった。昼間のうちに 巣をつくっておけばよかった」
冷たい風にさらされて、 怖くて悲しい夜をおくります。
ずっとずっと泣きつづけたので、目は真っ赤にはれています。
いつのまにか風はやみ、 東の空がうっすらと明るくなってきました。
お日さまがニコニコと微笑みながらお空にのぼってきたのです。
そのとたん、かんくちょうは きのうの夜の恐ろしい風や、
身を切るような寒さでずっとずっと泣きつづけたことをすっかり忘れてしまいます。
そしてまた、温かいお山のてっぺんで、いねむりをしたり歌をうたったり、一日中、遊んですごすのです。
お日さまが西に隠れると、かんくちょうは、また
「しまった。あしたこそ遊んでないでちゃんと巣をつくろう」
と思います。そして冷たくて恐ろしい風が ピューピュー吹くなかを、 たったひとり、 泣きながらすごすのです。