旋陀羅の鈴
お話たまて箱
アンョーカ王はインドの名だたる王様で、仏教を手厚く保護した方てした。
王には、弟がいました。その名はダッターユ。こちらは仏教が大嫌いでした。
弟になんとか仏の道を歩かせたいと願った兄は、あるとき一計を案じました。
「これから予は旅に出る。留守を頼む」
兄王が少数の家臣と出かけた日の夜、一人の重臣がダッターユを訪ねました。
「私は国王を心の底から根んています。他にも王を憎むものは少なくありま せん。どうか、お立ちください。今こそ、あなたが新たな王になる時てす」
まさかの謀反話にダッターユの心は揺れましたが、兄王の信任厚い老臣までもが加担していると聞き、ついに謀反を宣言しました。
ところが、「謀反人だー」との声が響き渡り、たちまちダッターユはとらえられ、牢に入れられました。
そこへ、兄王が帰ってまいりました。
「謀反とは許しがたい。そなたを死刑に拠す。しかし、哀れでもある。そなたの望みをかなえ、七日間だけ国王にしてやろう。好きにせよ」
王宮にもどされたダッターユは、好き放題の替沢三昧に過ごしました。世界各国のおいしい料理をあつめ、美女を侍らせ、舞えや歌えやの大騒ぎ・・・。
しかし、夜になると、首切り役人の旋陀羅(せんだら)が大きな鈴をジャラーンと鳴らし、
「一日たったぞー。あと六日だー」と大声て告げます。
二日目も、そして三日目も・・・。七日間は夢のように過ぎていきました。
処刑を前にした弟に向かって、兄王は言いました。
「どうじゃ、国王の身分は。七日間は業しかったてあるう」
「とんでもありません。死が一日ごとに近づいてくるのに、どうして楽しんでばかりいられましょう。もっと大事な、なすべきことがあるのてはないかと、そればかりを考えていました」
「それを無常観というのじゃ。よいことに気がついたな」
すべては兄王の謀りごとと知らされたダッターユは、その後、兄に負けない 熱心な仏の信者となりました。