お知らせ

蜘蛛の糸<上>

 ある日のことてす。お釈迦さまが空の上から、地獄のようすをご覧になっておりました。

 そこでは、カンダタという男が鬼の番人に苦しめられておりました。カンダタは、人殺しも平気な極悪非道の大泥棒。生きていたときの悪い行いがもとで、死んで地獄に堕ちたのです。

 そんなカンダタですが、死ぬ前にたった一度だけ善い行ないをしました。道ばたで見つけた一匹の小さな蜘蛛。カンダタはすぐに踏み殺そうとしましたが、

「いや待て。小さいながらも命あるもの。殺してしまうのはやめておこう」

と、蜘蛛を助けてやったのです。

 お釈迦さまはすべてをご存知です。カンダタの善い行ないに報いるために、 できればこの男を地獄から救い出してやろうとお考えになりました。ふと横を見ると小さな蜘蛛が一匹。その蜘蛛の吐く糸を地獄の底へ、まっすぐに下ろし ていかれたのでした。

カンダタは今日もまた、ほかの罪人たちといっしょに血の池を浮きつ沈みつしておりました。なんにも見えない真っ暗闇で、聞こえてくるのは罪人がつく悲しそうなため息ばかりです。(つづく)