愚公、山を移す
愚公、山を移す
あるところに、愚公と呼ばれるじいさんが住んでおりました。愚公とは「おろか者」という意味の、村人がつけたあだ名です。
悪公の家は大きな山のふもとにあり、都へ買い物に出かけるには、 この山を大きくまわり道して行かなくてはなりません。なんとも難儀な話でありました。
ある日、愚公は一族を全員あつめて言いました。
「わしはこれから、この山を削って平らにし、お前たちが都まてで行くのに便利な道を通そうと思う。どうじゃ」
「あんな大きな山を削るてすって。削り取った岩や土はどうするつもりてすか」
ばあさんが心配して聞きました。
「岩や土は海まで運んで、理め立てにつかえばよいじゃろう」
じいさんの意気込みにおされて話はまとまりました。愚公は子や孫といっしょに山を削りはじめました。 岩や土をバケツに入れて、一度海まで運び、帰ってくるまて一年の月日がかかりました。
それを見ていた智叟というじいさんがバカにして言いました。
「おまえは噂どおりのおろか者じゃ。老い先短いおまえが、どうして山を切り開いたりできようか」
すると、愚公はあきれて言い返しました。
「おまえさんは知恵者だと言われているが、うちの孫にも及ばんな。わしが死んでも子や孫があとを継ぐ。
そのあともまたつながってゆく。山は今より高くはならんじやろう。山がなくならぬわけがあるまいが」
この話を聞いていた山の主の神さまは、山が切り崩されていくことにほとほと困りはて、
天帝に訴えて出ました。天帝は愚公の強い意志とやさしさに心を打たれ、カ持ちの神さまに命じて、山を往来の妨げにならぬ場所へと移してやったということてす。